近年、日本とベトナム間のM&A(Mergers & Acquisitions - 合併・買収)案件は強いトレンドとなっており、日本企業のベトナム市場への関心の高まりを反映しています。急速な経済成長、若く豊富な労働力、そして生産コストの優位性を持つベトナムは、日本企業にとって魅力的な投資先となっています。特に製造業、不動産、テクノロジー、金融業界において、多くのM&Aが実施されています。

1. 代表的なM&A案件
住友三井トラスト・ホールディングスとBIDVのM&A
2013年、住友三井トラスト・ホールディングス(Sumitomo Mitsui Trust Holdings)は、BIDV(ベトナム投資開発銀行)の株式15%を約2億4000万米ドルで取得しました。このM&Aにより、BIDVの財務基盤が強化され、国際市場への展開の機会が広がりました。
三菱商事とマサン・コンシューマーのM&A
2015年、三菱商事(Mitsubishi Corporation)は、マサン・コンシューマー(Masan Consumer)の一部株式を取得し、ベトナムの消費財市場への参入を果たしました。この提携により、ベトナム市場での製品開発が促進され、海外市場への進出も視野に入れられました。
イオンとFivimartのM&A
日本の大手小売企業であるイオン(Aeon)は、2015年にベトナムのスーパーマーケットチェーンFivimartの株式49%を取得しました。このM&Aは、イオンのベトナム市場への関心の高さを示すものでしたが、激しい競争の中での事業展開には多くの課題が伴いました。
双日とビングループのM&A
双日(Sojitz Corporation)は、ビングループ(Vingroup)と提携し、ベトナムの大規模不動産開発プロジェクトに参画しました。この協力により、プロジェクトの資金調達と規模拡大が進められました。
日本たばこ産業(JT)とVinatabaのM&A
2007年、日本たばこ産業(Japan Tobacco Inc.)は、Vinataba(ベトナムたばこ公社)の支配権を取得し、ベトナムのたばこ産業への参入を果たしました。
キリンとマサン・グループのM&A
2011年、キリン(Kirin)は、マサン・グループ(Masan Group)の株式14%を取得し、ベトナムの飲料・食品市場での生産・流通能力の強化を図りました。
2. 今後のトレンドと展望
- IT・デジタルトランスフォーメーション分野のM&A: クラウドサービスやデジタル技術に関するM&Aが急増しています。
- 小売・消費財市場でのM&A: 成長する中間層を背景に、日本企業はベトナムの小売市場での投資機会を積極的に探っています。
- 医療・ヘルスケア分野への投資: 医療・介護分野の需要拡大を受け、日本企業による投資が増加しています。
結論
日本とベトナムのM&A案件は、両国の経済協力を促進し、持続可能な発展に貢献しています。投資環境のさらなる改善により、今後もM&A市場は拡大し続けると予想されます。